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細菌ゲノミクス:ピロリ菌の古代生態種
Nature 635, 8037 doi: 10.1038/s41586-024-07991-z
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、ヒト宿主に長期間定着すると胃粘膜を破壊し、潰瘍や胃がんなどの重篤な疾患を引き起こす。ピロリ菌には数多くの病原性因子が特定されており、広範囲にわたる地理的な多様性が示されている。今回我々は、ピロリ菌の「ハーディ(Hardy)」生態種を特定した。この生態種は、ゲノムの大部分で同じ地域の「ユビキタス(Ubiquitous)」ピロリ菌と祖先を共有するが、100の遺伝子でほぼ固定された一塩基多型の差異を持ち、これらの遺伝子の多くは外膜タンパク質や宿主相互作用因子をコードしている。ほとんどのハーディ株は、ニッケルではなく鉄を補因子として用いる第二のウレアーゼと、空胞化細胞毒素VacAの2つの追加コピーを持つ。ハーディ株は現在、シベリアおよび南北アメリカ大陸に固有の集団や、ヒトから他の哺乳類への宿主飛び移りを果たした系統など、限られた範囲にしか分布していない。多型データの解析から、ハーディ株とユビキタス株は、現生人類がアフリカを離れる前から胃の中で共存しており、両株は現生人類の移動によって世界中に分散したことが示唆された。我々の結果は、株間で継続的な遺伝子交換がある場合でも、細菌集団内で非常に異なる適応戦略が生じて、安定して維持される可能性があることも示している。

