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がん遺伝学:変異誘発とecDNAの相互作用は尿路上皮がんの進化の形を決める

Nature 635, 8037 doi: 10.1038/s41586-024-07955-3

進行性尿路上皮がんは致死的となることの多い疾患で、著しく高い遺伝的不均一性が特徴である。今回我々は、内因性および外因性の変異過程およびそれらと複雑な構造バリアント(SV)との相互作用によって生じたゲノムシグネチャーの進化について調べた。尿路上皮がん患者由来のマッチする一連の腫瘍の変異シグネチャーと系統発生学的解析とを重ね合わせることで、これらの過程の進化動態を明らかにした。APOBEC3が誘発する変異はクローン性で早期に起こるのに対し、化学療法は数百に及ぶサブクローン性の変異の群発を後期に引き起こすことが分かった。ゲノムグラフを用いる計算ツールを使って、染色体外DNA(ecDNA)を形成するSVの特徴である高コピー数環状アンプリコンが高頻度で観察された。ecDNA形成性SVでのAPOBEC3が誘発する変異と化学療法が誘発する変異は、時間的パターンが異なることが明らかになり、ecDNA生成に関するこれらの変異過程のタイミングについて新たな知見が得られた。尿路上皮がんでのCCND1の増幅の大半は、環状ecDNAを形成するSVで生じていることも分かった。ecDNAを形成するSVは寿命が長く複雑さが増していて、DNA断片をさらに取り込んで治療抵抗性の進化の一因となる。オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ社のロングリード全ゲノムシークエンシング技術を用いた解読に続いてde novoアセンブリーを行って、CCND1 ecDNAの構造を詳細に示した。CCND1 ecDNAの実験的モデル作製により、これが治療抵抗性のドライバーとしての役割を持つことが確かめられた。これらの知見によって、尿路上皮がんの進化を促進し、治療に重要な意味を持つ基本的機構が明らかになった。

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