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がん:哺乳類の発生と前がん病変の経時的記録

Nature 634, 8036 doi: 10.1038/s41586-024-07954-4

細胞事象に時間的な順序を付けることで、生物学的現象についての基本的な手掛かりが得られる。これは従来、連続的な直接観察によって達成されてきたが、それに代わる方法の1つでは、自然に生じる変異などの不可逆的な遺伝的変化を利用して、消えない標識を作り出し、遡及的に時間的順序付けを可能にする。今回我々が、多目的の単一細胞CRISPRプラットフォームを用いて開発した分子時計手法は、細胞の状態や細胞系譜情報を組み込んで、in vivoでの細胞事象およびクローン性のタイミングを記録する。我々はこの手法を用いて、マウスの胚発生中の組織特異的な細胞増殖の正確なタイミング、細胞タイプ間の非従来型の発生関係、および独自の遺伝的履歴による新しい上皮前駆細胞状態を明らかにした。また、マウスの腺腫の解析に加えて、ヒト前がん病変のマルチオミクスおよび単一細胞のプロファイリング、さらに418のヒトのポリープのクローン解析を組み合わせた結果、大腸の前がん病変の15~30%で多クローン性イニシエーションが起こっていることが実証され、それらが複数の正常な創始者(founder)に由来していることが示された。我々の研究は、哺乳類の系において発生や腫瘍形成の起源とタイミングを探るために、合成または天然の消えない遺伝的変化と単一細胞解析を統合して、in vivo記録の基盤となるマルチモーダルな枠組みを示している。

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