Article

生物医学:低血糖リスクを弱めたグルコース感受性インスリン

Nature 634, 8035 doi: 10.1038/s41586-024-08042-3

糖尿病のインスリン治療に関連する大きな課題は、低血糖症を引き起こすリスクである。血糖値が正常範囲に確実に収まるよう、インスリンの投与量を調整しなければならないが、投与量が必要量よりわずかに高いだけでも低血糖を引き起こす可能性があり、低血糖症は、不快症状から命に関わるものまで多様であるので、変動する血糖値に投与量を適確に合わせるのは難しい。そのため、環境のグルコースレベルに応じて可逆的にインスリン生物活性の自動調節が可能なグルコース感受性インスリンを作製して、最終的には、低血糖のリスクを下げながら、より良い血糖コントロールを実現することが長い間目標とされてきた。本論文で我々は、インスリン抱合体NNC2215の設計と特性について報告する。我々は、in vitroとin vivoにおいて、NNC2215の生物活性が糖尿病で見られる範囲のグルコースレベルに可逆的に応答することを実証した。NNC2215は、グルコースと結合する大員環分子とグルコシドをインスリンに抱合させることで作製したので、グルコースに応答して開閉するスイッチとして働き、インスリンを活性なコンホメーションと活性の低いコンホメーションの間で平衡化する。グルコース濃度が3 mMから20 mMに上昇すると、NNC2215に対するインスリン受容体の親和性は3.2倍に上昇した。動物実験では、このグルコース感受性NNC2215の生物活性は、グルコースの血糖変動を部分的に抑えながら、低血糖を防ぐことが実証された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度