生態学:タイヘイヨウサケ類による栄養素および汚染物質の大陸規模の送達
Nature 634, 8035 doi: 10.1038/s41586-024-07980-2
移動性の動物による大量の栄養素の移動は、それを受け入れる食物網に生態学的な利益をもたらすが、それは共輸送される汚染物質によって相殺される可能性がある。サケ類の産卵回遊はこの過程の典型例であり、海洋由来の物質を内陸の生態系に運ぶが、それは局地的な生産力を刺激する一方で汚染物質への曝露も増加させる。タイヘイヨウサケ類の現在の個体数および生物量は前世紀よりも多く、これは群集構造における大きな変化を反映していて、それにより栄養素と汚染物質の送達にも変化が生じたと考えられる。今回我々は、栄養素および汚染物質の濃度を40年にわたるタイヘイヨウサケ類の回帰数の年次データと組み合わせ、群集構造の変化が海洋から北米西部の淡水域への物質流入にどのような影響を与えたかを定量化した。その結果、サケ類は毎年トン単位の栄養素とキログラム単位の汚染物質を淡水域に送達していることが分かった。サケ類の回帰数の増加(1976~2015年)は、サケ類に由来する栄養素および汚染物質の流入をそれぞれ30%および20%増加させていた。これらの増加は、他の種よりも寿命が短くて海洋食物網のより下位の栄養段階に位置するカラフトマス(Oncorhynchus gorbuscha)によるものが大半を占め、この種では汚染物質に対する栄養素の比率が最も高かった。結果として、栄養素の送達は汚染物質の送達を上回る速度で増加し、サケ類による物質流入の生態学的有益性は年数を経るにつれて増大した。とはいえ、サケ類を餌とする一部の捕食者にとっては汚染物質の負荷が曝露の懸念となる可能性がある。今回のタイヘイヨウサケ類の例は、長期的な環境変化が広範な空間規模で栄養素および汚染物質の移動とどのように相互作用するかを実証しており、他の移動性動物種で同様のパターンを探求するためのモデルを提供する。

