分子生物学:RNAのm5CのTET2による酸化がクロマチンの状態と白血病発生を調節する
Nature 634, 8035 doi: 10.1038/s41586-024-07969-x
tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2(TET2がコードする)の変異は、骨髄の悪性腫瘍の発生と進行を促進する。TET2欠失は、全体的に開いたクロマチン状態と造血幹細胞の異常な自己再生に関わる遺伝子の活性化を引き起こすことが知られている。しかし、TET2欠失マウスの胚性幹細胞、白血病細胞、造血幹細胞、前駆細胞で見られる開いたクロマチンは、DNA 5-メチルシトシン酸化というTET2が持つと言われている役割とは一致しない。今回我々は、クロマチンに関連するレトロトランスポゾンRNAの5-メチルシトシン(m5C)が、メチル-CpG結合ドメインタンパク質MBD6によって認識され、これが近傍にあるヒストンH2Aのモノユビキチン化リシン119(H2AK119ub)の脱ユビキチン化を誘導して、開いたクロマチン状態を促進することを明らかにする。TET2はm5Cを酸化し、MBD6に依存したH2AK119ubのこの脱ユビキチンに拮抗する。従ってTET2が枯渇すると、幹細胞ではH2AK119ubが全体的に減少し、開いたクロマチンが増え、転写が亢進する。TET2が変異しているヒト白血病は、この遺伝子の活性化経路に依存するようになり、MBD6が枯渇するとTET2変異白血病細胞の増殖が選択的に阻害され、マウスモデルでTet2喪失によって引き起こされる造血異常の大部分が元に戻った。総合すると、これらの知見によって、レトロトランスポゾンRNAのm5Cの酸化を介して働くTET2によるクロマチン調節経路の存在が判明し、下流のMBD6タンパク質が、TET2変異体を持つ悪性腫瘍に特異的な治療法の開発につながる実現可能と思われる標的になることが明らかになった。

