神経科学:感情の状態を符号化する線状アトラクターの因果的証拠
Nature 634, 8035 doi: 10.1038/s41586-024-07915-x
連続アトラクターは神経集団動態の創発的な性質で、頭の向きや眼の位置などの連続変数を符号化するという仮説が立てられている。哺乳類では、連続アトラクターが神経に備わっているという直接的証拠は、関係する神経集団中で特定のニューロンを標的とした摂動を起こすことが困難であるため、まだ得られていない。しかし、動的システムモデル化によって、攻撃的な遭遇をした雄マウスで、視床下部ニューロンがほぼ線状アトラクターといえる動態を示すことが明らかになっている。この動態が、攻撃的な内的状態での変数の強度と持続を符号化している可能性があるという仮説を、我々は以前に提唱している。今回我々は、頭部固定下のマウスが攻撃を目撃したときにも、これらのニューロンが線状アトラクター動態を示すことを報告する。これによって、線状アトラクターに寄与するニューロンを、2光子カルシウム画像化とホログラフィック光遺伝学的摂動の手法で特定して操作することが可能になった。多様体上の摂動によって、光遺伝学的刺激パルスと、線状アトラクターに沿ってシステムを駆動する持続的活動との統合が得られ、一方、一過的な多様体外の摂動ではアトラクターに向かって戻る急速な緩和が起きた。さらに、単一細胞刺激と画像化によって、アトラクターに寄与するニューロン間の選択的な機能的結合が明らかになった。特に、線状アトラクターの安定性についてのマウス間の個体差は、アトラクターに寄与するニューロン間の機能的結合の程度と相関していた。また、機械的な反回性神経ネットワークモデル化では、密なサブネットワーク結合と遅い神経伝達が、今回の実験結果を最もよく再現した。今回の知見は、回路レベルと多様体レベルを橋渡しするものであり、哺乳類の視床下部において連続的なアトラクター動態が感情的な内部状態を符号化しているという因果的証拠を提供する。

