微生物学:ウイルスのさまざまなcas遺伝子がCRISPR免疫に拮抗する
Nature 634, 8034 doi: 10.1038/s41586-024-07923-x
原核生物のCRISPR–Cas免疫は抗CRISPR(Acr)によって阻害される。Acrはファージの溶菌サイクル中に、あるいは常在するプロファージまたはプラスミドから発現して、Casタンパク質の活性を阻害する。Acrは特定のコグネイトCasタンパク質に結合することが多いため、阻害は通常、単一のCRISPR–Casサブタイプに限定される。さらに、acr遺伝子はファージ関連遺伝子クラスターと共に構成されることが多いが、このような阻害因子が元々どのように進化したかは分かっていない。今回我々は、4種類のCRISPR–Cas系(I-B型、II-A型、II-C型、VI-A型)を天然に持つリステリア属(Listeria)細菌のさまざまな分離株について、Acrの内容と阻害特異性を調べた。その結果、CRISPRに対する広範な拮抗作用が観察され、こうした拮抗作用は、内因性の可動性因子がコードする、これまで知られていなかった11のacr遺伝子ファミリーと既知の4つのacr遺伝子ファミリーに起因することが突き止められた。これらのうち、2つのAcrがI-B型Casタンパク質との配列相同性を持ち、そのうちの1つは異常な干渉複合体を形成した。意外なことに、さらに別のI-B型CasホモログはI型免疫には影響を及ぼさなかったが、代わりにCRISPR RNA(crRNA)分解によって、RNAを標的とするVI型CRISPR系を阻害した。ウイルス塩基配列データベースを調べることで、推定の抗防御遺伝子クラスター内に位置するオーファンcas遺伝子が多数検出された。その中で、I-B型、II-A型、VI-A型のCRISPR免疫を阻害する、特に広範なcas3ホモログの活性が検証された。我々の観察結果は、cas遺伝子を取り入れることによるAcr進化の直接的な証拠と、ゲノム編集技術の広範な制御を可能にし得る新しい遺伝子を示している。

