神経科学:内因性オピオイドシグナル伝達は脊髄上衣細胞の増殖を調節する
Nature 634, 8033 doi: 10.1038/s41586-024-07889-w
哺乳類の脊髄は損傷後、瘢痕を形成して損傷を制限し、損害が広がるのを防いでいる。しかし、過剰な瘢痕形成は神経の再生と機能回復を妨げる場合がある。これらの競合する作用は、瘢痕の進行を動的に調整する治療戦略開発の重要性を強調している。瘢痕形成に関するこれまでの研究では、主にアストロサイトに注目していたが、最近得られた証拠からは、上衣細胞も関与することが示唆されている。上衣細胞は通常、中心管を包み込む上皮層を形成しているが、特定の損傷を受けると大規模に増殖し、アストログリアへと分化して、瘢痕の中核的な構成要素となる。しかしながら、in vivoで上衣細胞の増殖を調節する機構についてはまだ明らかにされていない。本研究で我々は、上衣細胞の増殖を制御する、内因性のκオピオイドシグナル伝達経路を発見した。具体的には、まだ機能の特性解析が進んでいない脳脊髄液接触ニューロン(CSF-cN)と呼ばれる細胞タイプにおいて、κオピオイド受容体であるOPRK1の発現が検出された。また、コグネイトリガンドであるプロダイノルフィン(PDYN)を発現する隣接細胞集団も見つかった。一般にはκオピオイドは抑制性だと考えられているが、それらはCSF-cNを興奮させて上衣細胞の増殖を阻害する。κアンタゴニストの全身投与は、非損傷脊髄においてCSF-cN依存的様式で上衣細胞の増殖を促した。さらに、κアゴニストは、損傷後の上衣細胞の増殖、瘢痕形成、運動機能を損なわせた。まとめると我々のデータは、PDYN+細胞がκオピオイドを持続的に放出してCSF-cNの刺激と上衣細胞増殖の抑制を行うパラクリンシグナル伝達経路の存在を示唆しており、脊髄損傷後の瘢痕形成を調節する内因性機構とそれに対する有望な薬理学的戦略を明らかにしている。

