構造生物学:細菌のPARIS防御系の構造と活性化機構
Nature 634, 8033 doi: 10.1038/s41586-024-07772-8
細菌と、細菌に感染するウイルス(バクテリオファージあるいはファージ)は、激しい進化的軍拡競争を繰り広げている。細菌が持つ多くの抗ファージ防御系の機構は知られているが、これらの系が感染以外での毒性を回避しつつ、感染後に迅速に活性化する仕組みはあまりよく分かっていない。今回我々は、細菌のPARIS(phage anti-restriction-induced system)が毒素–抗毒素系として機能していて、この系では抗毒素AriAが毒素AriBを隔離して不活化し、T7ファージの防御対抗(counterdefence)タンパク質Ocrによって駆動されるまでこの状態が維持されることを示す。我々は、クライオ電子顕微鏡を用いて、AriAはSMCファミリーのATPアーゼに類縁だが、2つのオリゴマー化の境界面を介して独特なホモ六量体複合体へと組み立てられることを示す。感染が起こっていない細胞では、AriA六量体は最大3つのAriB単量体に結合し、AriBを不活性状態に維持する。AriA六量体は、Ocrと結合すると構造を再編してAriBを遊離し、これによってAriBの二量体化と活性化が可能になる。AriBはtoprim/OLDファミリーのヌクレアーゼであり、AriBの活性化はリシンtRNAの特異的な切断を介してタンパク質翻訳を全体的に抑制することで、細胞増殖を停止させ、ファージの増殖を抑制する。総合的に我々の知見は、ファージの1つの防御対抗タンパク質によって駆動される細菌防御系の複雑な分子機構を明らかにしており、SMCファミリーのATPアーゼが細菌における感染センサーとしてどのように適応してきたかを浮き彫りにしている。

