免疫学:フィブリンはCOVID-19において血栓性炎症と神経病理を駆動する
Nature 633, 8031 doi: 10.1038/s41586-024-07873-4
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、致命的な血栓症事象や神経学的症状が広く見られ、これらは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の急性期後後遺症を呈するlong COVID患者では持続的である。臨床的な証拠はあるものの、COVID-19での血液凝固障害の根本的な機構や、それが炎症および神経病理に及ぼす影響はほとんど分かっておらず、治療選択肢も十分ではない。血栓の主要な構造成分であるフィブリノーゲンは、COVID-19患者の肺や脳に大量に沈着し、疾患重症度と相関しており、COVID-19後認知障害の予測バイオマーカーである。本論文で我々は、フィブリンがSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、COVID-19において全身的な血栓性炎症や神経病理を引き起こす炎症性血栓を形成することを明らかにする。フィブリンはその炎症性ドメインを介して作用し、SARS-CoV-2感染後に肺での酸化的ストレスやマクロファージの活性化に必要である一方で、ナチュラルキラー細胞を抑制する。感染後、フィブリンは神経炎症やニューロン喪失を促進し、さらに活動性感染とは独立に脳や肺で自然免疫活性化を増強する。フィブリンの炎症性ドメインを標的とするモノクローナル抗体は、ミクログリアの活性化やニューロンの損傷に対して保護的に働き、さらに感染後の肺で血栓性炎症も防いだ。このようにフィブリンは、SARS-CoV-2感染において炎症および神経病理を引き起こし、またフィブリンを標的とする免疫治療は、急性期COVID-19やlong COVIDの患者に対する治療介入となる可能性がある。