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発生生物学:DNA複製タイミングプログラム出現時の胚ゲノム不安定性

Nature 633, 8030 doi: 10.1038/s41586-024-07841-y

DNAの忠実な複製はゲノムの完全性に不可欠である。未複製領域のあるDNAは染色体分離の異常につながるが、この異常は胚発生期によく見られる。しかし、哺乳類の初期胚におけるDNA複製の制御様式はほとんど解明されていない。今回我々は、マウス着床前胚の単一細胞ゲノム規模DNA複製アトラスを構築し、複製プログラムの突然の切り替わりと、それに付随したゲノム不安定性が一過的に上昇する時期を見いだした。1細胞期胚および2細胞期胚では、複製タイミングプログラムが全く存在しておらず、非常に動きの遅い複製フォークにより、ゲノム全体が徐々かつ一様に複製されていた。4細胞期胚では、体細胞様の複製タイミングプログラムが突如として開始した。しかし、複製フォーク速度は依然として遅く、S期は長くなっており、複製ストレスやDNAの損傷および修復のマーカーの上昇が起きた。これに引き続いて、4細胞から8細胞への分裂の時期特異的に切断型の染色体分離エラーが増加しており、その切断点はS期後半複製領域に濃縮していた。こうしたエラーはヌクレオシドの添加によって救済され、複製フォーク速度が加速し、複製ストレスも減少した。8細胞期までには、複製フォーク速度は上昇し、S期は延長しなくなり、染色体異常の減少が見られた。従って、マウスの正常な発生過程には、ゲノム不安定性が一過的に上昇する時期が存在し、その直前のS期ではレプリソームレベルの調節とメガ塩基規模の複製タイミング調節の間の協調性が失われていたことから、これらの協調性とゲノム安定性との関連が示唆された。

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