Article
神経科学:感覚の予測誤差信号を作り出す視床皮質間の協調的な回路機構
Nature 633, 8029 doi: 10.1038/s41586-024-07851-w
脳は、外界についての内部モデルを利用して、自らの行為の結果や感覚を予想する予測装置として機能する。予想と実際に起きた事象との食い違いを予測誤差と呼ぶが、それは内部モデルの更新に利用され、想定外の事象に対しての注意を促す。予測誤差信号は、脳でのさまざまな神経演算に重要であると考えられているが、意外にも、その実行に関与する神経回路機構については、ほとんど明らかにされていない。本論文で我々は、今回新たに見つかった視床皮質間の脱抑制的回路機構が、マウス一次視覚野(V1)での感覚予測誤差信号の生成を担うことを述べる。動物の予測を想定外の視覚刺激によって擾乱すると、提示された刺激に対して最も選択的なV1の2/3層ニューロンの応答が優先的に増強された。予測誤差信号は、予測と実際の視覚入力が異なるという驚き自体や、それらが具体的にどう異なるかという差分信号を表現するのではなく、想定外の視覚入力を特異的に増幅した。この選択的増幅は、視床枕核から皮質への入力と、皮質で血管作動性腸管ペプチド(VIP)を発現する抑制性介在ニューロンを必要とする協調的な機構によって実行される。予測誤差に対応して、VIPニューロンは、V1への興奮性視床枕入力を制御するソマトスタチン発現性の抑制性介在ニューロンの特定の一部集団を抑制し、その結果、V1で最も当該刺激に選択的なニューロンの反応が、視床枕原性に特異的に増幅される。従って、脳は、視床からの入力と新皮質のVIP–SOM脱抑制回路の相乗的な相互作用を通じて、想定外の入力が持つ特徴の顕著性を選択的に増幅することによって、想定外の情報を優先させている。

