免疫学:テストステロンによるジェンダー肯定治療の過程での免疫系の適応
Nature 633, 8028 doi: 10.1038/s41586-024-07789-z
感染症、炎症性疾患、自己免疫疾患は、男性と女性で症状が異なる。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染歴のない男性では、SARS-CoV-2感染は死亡リスクの上昇と関連があるが、女性の場合は新型コロナウイルス感染症後遺症(long COVID)のリスクが上昇しており、他の感染症でも同様の観察結果が得られている。女性はワクチンへの応答がより強く、有害反応がより頻繁に起こるが、これはほとんどの自己免疫疾患と同様である。免疫学的な性差は、遺伝要因、ホルモン要因、行動要因から生じるが、これらの相対的な重要性について分かっていることはほんのわずかである。出生時に女性と定められて、後にテストステロンによるジェンダー肯定治療を受けている人(トランス男性)では、ホルモン濃度は顕著に変化しているものの、免疫学的な結果についてはほとんど明らかになっていない。今回我々は、23人のトランス男性において縦断的な全身レベルの解析を行い、テストステロンがI型インターフェロンと腫瘍壊死因子の間の交差調節軸を調整することを見いだした。これは、形質細胞様樹状細胞と単球の両方におけるI型インターフェロン応答の機能的減弱によって仲介される。逆に、テストステロンは単球の応答を増強し、その結果、腫瘍壊死因子、インターロイキン6、インターロイキン15の産生が増加し、NF-κB調節遺伝子の下流活性化が起こり、主にナチュラルキラー細胞においてインターフェロンγ応答が増強された。トランス男性についてのこれらの知見は、公開データセットにおける性差のある応答で裏付けられていて、性ホルモンによるヒト免疫の動的な調節を例証しており、ホルモン療法を受けている人の健康や、シスジェンダーの人における性差のある免疫応答についての理解に重要な意味を持つ。

