遺伝学:シグナル伝達とシス調節エレメント活性をDNAに記号として記録する
Nature 632, 8027 doi: 10.1038/s41586-024-07706-4
遺伝子発現やシグナル伝達活性の測定は従来、対象となる時間枠内の生体試料の破壊またはライブ画像化を必要とする方法を用いて行われてきた。今回我々は、これに代わるパラダイムとして、そうした生物学的活性を安定的にゲノムに記録する方法を実証する。ENGRAM(Enhancer-driven genomic recording of transcriptional activity in multiplex)は、シグナル特異的なバーコード(記号)の、ゲノムにコードされた記録単位への挿入を仲介するプライム編集ガイドRNAのシグナル依存的な産生を基盤とする。我々は、この戦略が、数十から数百のシス調節エレメントの細胞タイプ特異的な活性の、高い忠実度、感度、再現性での多重記録にいかに使えるかを示す。我々はまた、シグナル伝達経路に応答するシス調節エレメントを利用することで、WNT、NF-κB、Tet-Onの活性を時間依存的および濃度依存的にゲノムに記録できることを示す。ENGRAMを、DNAタイプライターを介した連続ゲノム編集と組み合わせることで、我々はゲノムDNAに、2つの直交シグナル伝達経路の時間動態についての情報を安定に記録した。さらに我々は、ENGRAMを適用して、 マウス胚性幹細胞からガストルロイド(哺乳類の初期発生のin vitroモデル)への分化に及ぶ日単位の時間枠で、100近くの転写因子コンセンサスモチーフの一過性の活性を統合的に記録した。これらは概念実証実験であり、この方法が持つ可能性を完全に実現するにはまだ多くの研究が残されているが、細胞内の生物学的なシグナルまたは状態を記号としてゲノムに経時的に記録することには、生物学的システムでの測定法における現在のパラダイムを補完する幅広い可能性がある。

