分子生物学:Space Omics and Medical Atlas(SOMA)と国際宇宙飛行士バイオバンク
Nature 632, 8027 doi: 10.1038/s41586-024-07639-y
宇宙飛行は、宇宙飛行士に分子レベルや細胞レベルの変化や生理的変化を引き起こし、人体に非常に多くの生物医学的問題をもたらす。ヒトの宇宙への危険となりかねない進出が増えるにつれて、これは大きな問題となりつつある。しかし、現在の航空宇宙医学の枠組みはまだ初期段階で、地上の精密医療の進歩からは大きく遅れており、宇宙医学のデータベース、医学的手法やプロトコルの迅速な開発が必要なことは明らかである。今回我々は、多様なミッションから得られた臨床研究、細胞研究、マルチオミクス研究のプロファイルの統合データおよび試料リポジトリであるSOMA(Space Omics and Medical Atlas)を提示する。これには、NASAの双子研究、JAXAのCFE研究、スペースX社のミッションInspiration4の民間人乗組員データ、アクシオムスペース社およびポラリス計画などの広範囲にわたるミッションが関わっている。SOMAの情報資源によって、公開されているヒト宇宙オミクスデータは10倍以上に増えており、対応する試料はCornell Aerospace Medicine Biobankから入手可能である。このアトラスには、ゲノミクス、エピゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスとマイクロバイオームのデータセットを網羅する広範な分子的および生理学的プロファイルが含まれていて、これらから複数のミッションにわたって一致するいくつかの特徴(サイトカインシフト、テロメア伸長、遺伝子発現の変化など)が明らかになり、ミッション特異的な分子応答や、オルソロガスで組織特異的なマウスデータセットとの結び付きも示された。SOMAのこうしたデータセット、手法や資源の利用は、精密航空宇宙医学の進歩の加速につながり、今後の月、火星などの探査クラスのミッションに必要とされる健康モニタリング、リスク軽減や対策データをもたらすだろう。

