Article

認知神経科学:推論中にヒト海馬ニューロンで現れる抽象的表現

Nature 632, 8026 doi: 10.1038/s41586-024-07799-x

ヒトは、変化する環境に素早く適応するための、卓越した認知能力を持つ。この能力の中心にあるのは、高レベルの抽象的表現を形成する能力であり、外界に存在する規則性を利用して一般化を支えている。しかし、こうした表現が、ニューロン集団中でどのように符号化されるのか、学習を介してどのように出現するのか、行動とどのように連関するのかについては、ほとんど分かっていない。今回我々は、推論課題を実行中の脳外科手術患者の海馬・扁桃体・内側前頭皮質・腹側側頭皮質で記録された、ニューロン(単一ユニット)の集団の神経表現の幾何学的配置を分析した。その結果、海馬で形成される神経表現のみが、複数の課題変数を抽象的な(もしくは整理された)フォーマットで同時に符号化することが分かった。この表現の幾何学的配置は、被験者が推論実行を学習した後で特異的に観測され、整理された直接観測可能な課題変数と明らかにされた潜在的な課題変数とで構成されていた。試行錯誤を通じて推論を自習した場合でも、他者から言葉で指示を受けた場合でも、類似した幾何学的性質を持つ海馬表現が形成された。今回、表現フォーマットと推論行動の間に見いだされた関係は、抽象的表現の幾何学的配置と整理された表現の幾何学的配置が、複雑な認知に重要なことを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度