Article

植物遺伝学:在来品種の多様性の利用がコムギ育種の強力な手段となる

Nature 632, 8026 doi: 10.1038/s41586-024-07682-9

新たな育種能力の開発を通じて主要作物の遺伝的多様性を利用することは、食料安全保障を確かなものとする上で極めて重要である。今回我々は、世界的に重要な穀類であるパンコムギ(Triticum aestivum)のA. E. Watkins在来品種コレクションについて、遺伝的多様性と表現型多様性を調べるために、Watkins在来品種827系統および現代の栽培品種208系統に関して、全ゲノム塩基配列の再解読と10年にわたる詳細な野外評価を行った。その結果、現代の栽培品種は祖先的なコムギの7系統のうち2系統に由来し、ハプロタイプの完全性が極めて広範囲に維持されていることが明らかになった。残る5系統は未利用の遺伝資源であり、育種のために在来品種特有の対立遺伝子やハプロタイプを利用できる可能性がある。連鎖不平衡に基づくハプロタイプおよび関連遺伝解析によって、Watkinsのゲノムが、数千の特定された高分解能の量的形質座位および有意なマーカー–形質関係に結び付けられた。生殖質、ジェノタイピング、インフォマティクスのこうした構造化された情報資源を用いることで、現代のコムギに優れた形質を与え得る、Watkins特有の有益なハプロタイプが数多く明らかになった。さらに我々は、現代の栽培品種の状況において優先される143の量的形質座位から遺伝子移入された、4万4338のWatkins特有ハプロタイプの表現型への影響を評価し、在来品種の多様性と現在の育種との間の溝を埋めた。本研究は、持続可能な食料安全保障を実現するための作物の改良において、遺伝的多様性を体系的に利用するための枠組みを確立するものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度