神経科学:飽和と嫌悪を別個に導く後脳のGLP1R回路
Nature 632, 8025 doi: 10.1038/s41586-024-07685-6
最も成功した肥満治療薬であるグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP1R)作動薬は、悪心や嘔吐などの嫌悪反応を引き起こすが、こうした作用が薬剤の効力に寄与している可能性がある。今回我々は、飽和を嫌悪に結び付ける脳回路を探索し、意外にも、これらの作用を媒介する神経回路が機能的に分離可能であることを発見した。薬物が到達し得るGLP1R発現細胞集団を系統的に調べたところ、GLP1Rベースの抗肥満薬の効果に必要なのは、後脳ニューロンのみであることが分かった。後脳GLP1Rニューロンについてin vivo二光子画像化を行ったところ、大部分のニューロンは栄養刺激か嫌悪刺激のいずれかのみに応答し、両者には応答しないことが観察された。さらに、後脳の各亜領域を同時に画像化すると、最後野(AP)のGLP1Rニューロンは広く応答したが、孤束核(NTS)のGLP1Rニューロンは栄養刺激応答に偏ることが分かった。驚くべきことに、これらのニューロン集団を別個に操作したところ、NTSGLP1Rニューロンの活性化は、嫌悪なしに飽和をもたらすのに対し、APGLP1Rニューロンの活性化は、摂食減少を伴う強い嫌悪を引き起こした。解剖学的解析および行動学的解析から、NTSGLP1RニューロンとAPGLP1Rニューロンは、異なる下流の脳領域に投射し、それぞれ飽和と嫌悪を駆動していることが分かった。重要なことに、GLP1R作動薬は嫌悪経路の抑制下でも、摂食を低下させた。これらの知見をまとめると、NTSGLP1Rニューロン群を選択的に標的とすれば、治療アドヒアランスを妨げる有害な副反応なしに、体重減少を促すことができる可能性がある。

