神経科学:アストロサイトへのアデノシンシグナル伝達が脳の代謝と機能を調整する
Nature 632, 8023 doi: 10.1038/s41586-024-07611-w
数十億個もの神経細胞によって行われる脳の計算には、十分な栄養と酸素の連続的な供給が必要である。ニューロンに隣接して遍在するグリア細胞であるアストロサイトは、脳でのグルコース取り込みと代謝を制御しているが、ニューロンとアストロサイトを代謝的に結び付け、ニューロンのエネルギー要求をオンデマンドで確実に支援にする正確な機構は完全には分かっていない。今回我々は、in vitroとin vivoの実験動物モデルを用いて、アストロサイトの神経活動依存的な代謝活性化は、アストロサイトのA2B受容体に作用する神経調節物質アデノシンによって仲介されることを示す。A2B受容体の刺激は、カノニカルなサイクリックアデノシン3′,5′一リン酸(cAMP)–タンパク質キナーゼAシグナル伝達経路を誘導し、アストロサイトのグルコース代謝の急速な活性化と乳酸の放出を引き起こし、すぐに利用できるエネルギー基質の細胞外プールを補充する。アストロサイトでA2B受容体をコードする遺伝子を条件的に欠失させた実験マウスモデルにおいて、アデノシンを介した代謝シグナル伝達がシナプス機能の維持に不可欠であり、特に、エネルギー需要が高い、またはエネルギー供給が低下している状況でそれが顕著であることが明らかになった。アストロサイトでA2B受容体発現をノックダウンすると、脳のエネルギー代謝の大規模な再プログラム化が引き起こされ、海馬のシナプス可塑性が妨げられて、認知記憶が著しく低下し、睡眠が障害された。これらのデータは、アデノシンA2B受容体が神経活動のアストロサイトセンサーであることを明らかにしており、アストロサイトのcAMPシグナル伝達が脳のエネルギー代謝を調整して、睡眠や記憶などの基礎的な脳機能を支えていることを示している。

