Article

量子磁性:斥力により束縛されたマグノンの実験的観測

Nature 631, 8022 doi: 10.1038/s41586-024-07599-3

引力によって形成される安定な複合体、例えばハドロン、原子核、原子、分子、超伝導対は、自然界に普遍的なものである。対照的に、斥力によって安定化した複合体は、自然界に見られる系では脆弱であるので、理論上の構造であると長い間考えられてきた。意外にも、強い斥力相互作用によって束縛された原子対の形成が、光格子における実験で実証されている。こうした成功にもかかわらず、斥力により束縛された粒子対は、強力な崩壊経路に起因して凝縮系物質では類似体が存在しないと考えられていた。今回我々は、イジング様鎖反強磁性体BaCo2V2O8において、斥力により束縛された3マグノン状態と束縛マグノン対の分光学的特徴を示す。我々は、量子臨界点以下で大きな横磁場において、テラヘルツ分光測定の結果を、量子多体モデルの典型であるハイゼンベルク–イジング鎖反強磁性体の理論結果と比較することによって、斥力により束縛されたマグノン状態を特定した。今回の実験結果は、こうした高エネルギーで斥力により束縛されたマグノン状態が、連続状態から十分に分離され、顕著な動的応答を示し、散逸性にもかかわらず、特定できるほど十分に長寿命であることを示している。マグノンの束縛状態によってスピン鎖における輸送特性が変化し得ることから、我々は、こうした状態がマグノニクスに基づく量子情報処理技術のリソースになり得ると予想する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度