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認知神経科学:言語理解時の意味の符号化を単一細胞分解能で追う
Nature 631, 8021 doi: 10.1038/s41586-024-07643-2
ヒトは、言語音や文字の列から、言語を介して豊かでニュアンスを含む意味を抽出することができる。この能力は、ヒトのコミュニケーションに必須である。しかし、言語や意味の処理を支える脳領域についての理解が進んだ今も、細胞レベルかつ活動電位の時間スケールで言語の意味が神経組織内で抽出される様子は、ほとんど分かっていない。今回我々は、実験参加者が多様な意味の文章や写実的な物語を聴いている際に、左側の言語優位前頭前皮質の単一細胞から記録を採取した。自然な言語の処理中にニューロン活動を追跡することで、個々のニューロンによる意味情報についての精細な皮質神経表現が見つかった。これらのニューロンは、特定の単語の意味に対して選択的に応答し、単語と非単語を確実に識別した。また、これらのニューロンの活動は、固定された記憶表現として単語に応答するのではなく、非常に動的で、音声形式に関係なく、特定の文章の文脈に基づいたその単語の意味を反映していた。これらをまとめて我々は、こうした細胞集団が、音声の受容中にリアルタイムで、聴きとった単語の広範な意味上のカテゴリーをどのように正確に予測するのか、そしてその単語の使われた文章をどのように追っていくのかを示す。また、これらの意味の神経表現の階層的構造がどのように符号化されているのか、そうした表現が細胞集団上でどのようにマッピングされているのかも示す。今回の知見を総合すると、ヒトにおける意味の神経表現についての詳細な皮質構造がニューロンスケールで明らかになり、言語理解時の細胞レベルでの意味の処理の解明が始まった。

