細胞生物学:フェロトーシス性トリガー波による大規模な細胞死の発生
Nature 631, 8021 doi: 10.1038/s41586-024-07623-6
個体発生やヒトの病態では、大規模な細胞死がよく観察される。これらの細胞死の事象は長距離にわたって広がり、大きな細胞集団を除去する。このことは、細胞死が空間的・時間的にどのように調整されているのかという疑問を提起する。長距離のシグナル伝達を可能にする機構の1つにトリガー波があるが、この機構が細胞集団の死の事象にどのように働くかについてはまだ不明である。本論文で我々は、鉄と脂質過酸化に依存した細胞死の形態であるフェロトーシスが、活性酸素種(ROS)のトリガー波を介して一定速度(約5.5 μm min−1)で長距離(5 mm以上)にわたってヒト細胞を伝播できることを示す。化学的および遺伝的に摂動したところ、ROSのフィードバックループ(フェントン反応、NADPHオキシダーゼシグナル伝達、グルタチオン合成)がフェロトーシスを引き起こすトリガー波の進行を制御する上で主要な役割を担っていることが示された。我々は、シスチンの取り込みの抑制を介するフェロトーシス性ストレスの導入によって、これらのROSのフィードバックループが活性化されることを示す。これによって細胞の酸化還元系が単安定状態から双安定状態へ変換され、その結果、細胞集団はROSが伝播する双安定性媒体となるようプライミングされる。さらに我々は、フェロトーシスとその伝播が、鳥類胚での肢の筋肉のリモデリング時に起こる、大規模だが空間的に限られた細胞死事象を伴うことを示し、これが胚発生時の組織形態形成戦略として用いられていることを実証する。我々の結果は、フェロトーシスが広範囲の細胞死事象を調整する役割を担っていることを明らかにし、胚発生やヒト病態における大規模な細胞死を調べるためのパラダイムを示している。

