材料科学:超分子ゲルからの均一タンパク質の機械的放出
Nature 631, 8021 doi: 10.1038/s41586-024-07580-0
タンパク質やワクチンを、貯蔵や輸送の間も機能を維持し、コールドチェーン管理の負担を取り除けるように製剤化する方法は、長年の課題となっている。こうしたタンパク質は臨床的に適切なトリガーを用いて放出または適用されることから、いかなる解決策も実用的なものでなければならない。高度な生物学的療法は多大なエネルギーを用いて低温で流通されているため、低資源国では公平な流通が制限され、適切な貯蔵と取り扱いの責任は使用者側に課されている。コールドチェーン管理は、現時点で、タンパク質の輸送にとって最善の解決策であるが、多大なインフラとエネルギーを要する。例えば研究室では、−80°Cの冷凍庫1台が、1日に少人数世帯と同程度のエネルギーを消費している。生物学的療法(タンパク質療法や細胞療法)と全てのワクチンのうち、75%はコールドチェーン管理を必要とし、臨床試験におけるコールドチェーン管理のコストは2015年以降約20%増加していて、この複雑さを反映している。現在、オーダーメイドの製剤や賦形剤が必要とされており、表面の水分子を置き換えて変性を熱力学的に起こりにくくすることによりタンパク質を安定化する、トレハロース、スクロース、またはポリマーが広く使用されている。これによって、凍結乾燥タンパク質や凍結タンパク質が可能になった。例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが機能するには、アルミニウム塩アジュバントが必要だが、こうしたアジュバントによってワクチンが凍結融解に対して不安定になるため、サプライチェーンが非常に複雑化し高コスト化する。他には、タンパク質のシリカ封入(ensilication)や化学修飾を用いるアイデアもある。すなわち、タンパク質の安定化は、普遍的な解決策のない難題である。今回我々は、50°Cでもタンパク質を熱変性に対して安定化でき、現行の技術とは異なり、注射器からの機械的な放出によって純粋な賦形剤無添加タンパク質を送達できる、剛性ヒドロゲルを設計した。このゲルには、放出機構に影響を与えずに巨大分子を最大10 wt%まで充填できる。安定化と賦形剤なしの放出による、今回の他に類を見ない相乗効果によって、コールドチェーンを用いずに治療法を低コストで公平に世界中に届けるのを可能にする、実用的でスケーラブルかつ汎用的な解決策が実現される。

