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微生物遺伝学:肺炎球菌の地理的移動と適応度の動態
Nature 631, 8020 doi: 10.1038/s41586-024-07626-3
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は世界的に肺炎や髄膜炎の主な原因である。どの地域でも、多くの異なる血清型がその地方特有のものとして共存し、広まっている。拡散の程度や機構、ワクチンによる適応度や抗菌薬耐性の変化は、ほとんど定量化されていない。今回我々は、南アフリカ共和国で得られた地理的位置情報のあるゲノム塩基配列(n = 6910、2000~2014年に収集)を用い、ヒトの詳細な移動データとゲノムデータを組み合わせて、拡散を再構築するモデルを開発した。これとは別に、2009年に南アフリカ共和国に初めて導入された肺炎球菌結合型ワクチンに含まれる株(ワクチンタイプ〔VT〕株)と含まれない株(非ワクチンタイプ〔NVT〕株)の適応度について集団レベルでの変化を推定した。また、ペニシリン耐性株とペニシリン非耐性株の間の適応度の差異も評価した。その結果、肺炎球菌が南アフリカ共和国全域で均一に混ざり合うのは、伝播から50年後であり、このように拡散が遅いのはヒトの移動が限局的であるためであることが分かった。さらに、ワクチンの導入後数年間で、NVT株の適応度はVT株と比べて相対的に上昇し(相対リスク1.68、95%信頼区間1.59~1.77)、これらのNVT株のうちペニシリン耐性となる株の割合が上昇した。我々の知見は、伝播が非常に固定的で遅いことを示しており、ワクチン関連の抗菌薬耐性の初期の低下は一過性である可能性を示している。

