細胞生物学:Rb–E2Fの中間的な活性状態が増殖への運命拘束の安全装置として働く
Nature 631, 8020 doi: 10.1038/s41586-024-07554-2
組織修復や免疫防御、がんのプログレッションは、細胞が静止するか増殖するかの重要な決定に依存している。哺乳類細胞は正のフィードバック機構を誘発することによって増殖している。まず転写因子E2Fがサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)を活性化し、続いてCDK2がE2F阻害タンパク質である網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質をリン酸化して不活性化させる。この働きによりE2Fの活性がさらに高まり、増殖に必要な遺伝子が発現する。正のフィードバックは、小さなシグナルを不用意に増幅してしまう可能性があることを考えると、どのような仕組みで細胞がこのフィードバックを管理しているのかは謎である。今回我々は、E2FとCDK2のシグナル変化を単一細胞レベルで測定し、その正のフィードバック機構がG1期後期のみで働くことを明らかにした。細胞が増殖へと運命拘束される前には、E2Fは中間的に活性化された可逆的な状態にあり、その期間の長さは細胞によってさまざまで、長引くことも多い。この中間的なE2F活性は、CDK2またはCDK4/CDK6によって誘導される、Rbの進化的に保存されたT373残基のリン酸化の量に比例する。このようなT373がリン酸化されたRbはクロマチンに結合したままだが、Rbが多くの部位で超リン酸化されるとクロマチンから解離し、E2Fが完全に活性化される。T373のリン酸化が他の残基のリン酸化に比べて先に選択的に起こる理由は、T373の脱リン酸化速度が相対的に遅いことで説明できる。本研究をまとめると、E2Fが中間的に活性化された準備状態が見つかり、細胞はその期間に細胞内外のシグナルを感知し、正のフィードバック機構を起動して細胞分裂を開始するのか、あるいは細胞周期進行過程を逆戻りして静止状態に脱出するのかの運命決定をすることが明らかになった。

