Article

社会科学:通知はワクチン接種を促すが、無料送迎の追加は接種を促さないことが大規模試験によって示された

Nature 631, 8019 doi: 10.1038/s41586-024-07591-x

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の定期的なワクチン接種の意欲を高めることは、今後数十年にわたって重要な政策課題となる可能性がある。数十万もの不必要な入院や死亡を回避するために、ブースター(追加免疫)接種を受けた米国人が5分の1未満であった2022年あるいは2023年の秋よりも、接種率を高める必要性があるだろう。ワクチン接種を促す1つの取り組みは、交通不便という摩擦を取り除くことである。これまでの研究では、このような摩擦によってワクチン接種の完遂が妨げられ得ること、また、COVID-19ワクチン接種会場から遠くに住んでいる人はワクチン接種を受ける可能性が低いことが示されている。しかし、ワクチン接種会場への無料往復送迎を提供することの有用性は明らかではない。本論文で我々は、接種会場の薬局へ、リフト(Lyft)社のライドシェアサービスによる往復送迎を無料で提供することは、ワクチン接種を促す行動学に基づいたテキストメッセージ通知を送る以上の有益性はないことを示す。この結果は、米国のCVSファーマシーの数百万人の患者において大規模試験を行い、(1)CVSファーマシーでのワクチン接種の予約に対する、リフト社による無料往復送迎の効果と、(2)ワクチン接種を促す行動学に基づいた通知メッセージのセット7種類の効果を検討することで決定された。我々の結果は、専門家や非専門家の予測者のどちらもが強く期待していたことに反して、以前ワクチン接種した人にワクチン接種会場への無料送迎を提供しても米国では良い投資にはならないことを示唆している。そうではなく、米国の人々にはCOVID-19ワクチン接種を促す行動学に基づいた通知を送るべきで、これによって我々の大規模試験では30日間のCOVID-19ブースター接種が21%(1.05パーセントポイント)増加し、また波及効果として30日間のインフルエンザワクチン接種が8%(0.34パーセントポイント)増加した。エビデンスに基づく解決策を広く展開して、直感的に効果が期待されるが効果のないツールの打ち切りを確実に行うためには、ワクチン接種を促す介入をより厳密に試験する必要がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度