有機化学:メタロラジカル類を用いるビニルシクロプロパン類の動的な立体構造転移
Nature 631, 8019 doi: 10.1038/s41586-024-07555-1
化学プロセスにおける持続可能性向上とエネルギー利用低減への高まり続ける要求に答えるには、根本的に新しいアプローチと反応性原理が必要である。これに関連して、それほど貴ではない金属に奇数酸化状態が明らかに広く見られることは、メタロラジカル触媒反応を経る根本的に異なる反応性モードに、まだ活用されていない可能性があることを示している。有機フリーラジカルがビニルシクロプロパンに付加すると、ひずみ解放下での高速開環という、ラジカル仲介の機構プローブ(ラジカル時計)として広く役割を果たす変換につながるとする十分確立された反応性パラダイムに反して、今回我々は、金属系のラジカル、つまりNi(I)メタロラジカルが、開環ではなく可逆的なシス/トランス異性化の引き金となることを示す。この異性化は、キラル反転の下で進行し、置換パターンに依存して室温で5分以内に起こり、卑な触媒の付加のみを必要とする。計算による機構研究と実験による機構研究を組み合わせることによって、メタロラジカル触媒反応がこの重大な反応性の起源であることが裏付けられ、観察された立体反転が合理的に説明されるとともに、可逆性を含めてこのプロセスのカギとなる反応性の特徴が明らかになった。こうした知見により、複数のNi(I)触媒反応ラウンド、および天然物合成や全合成の戦略的モチーフであるジビニルシクロプロパン類への拡張を通して、単一ジアステレオマーに向けてエナンチオピュアなシス/トランス混合物の熱力学的繰り返し濃縮が可能になった。トランス異性体は通常、シス-ジビニルシクロプロパンへのラセミ化の下で熱異性化を引き起こすには約200°Cでの加熱が必要で、これは次いで容易にコープ型転位を起こすのに対し、今回、熱力学に反する類似過程が、Ni(I)メタロラジカル触媒反応の下で温和な条件下で立体化学的完全性を損なうことなく進行することが示され、これによって七員環、縮合環系、スピロ環への温和で立体化学的に純粋な実現が可能になった。

