構造生物学:哺乳類の呼吸鎖超複合体の高分解能in situ構造
Nature 631, 8019 doi: 10.1038/s41586-024-07488-9
ミトコンドリアは、酸化的リン酸化を介して起こるATPエネルギーの産生に極めて重要な役割を果たしており、この酸化的リン酸化はミトコンドリア内膜で一連の呼吸鎖複合体を介して起こる。その分子機構について、in vitroでの構造研究は広く行われているが、精製の過程で天然の環境が失われることが主な原因となって、生理的状態での詳細を原子レベルで決定することはいまだに難問のままである。今回我々は、in situでクライオ電子顕微鏡法を用いて、ブタのミトコンドリアを直接画像化した。その結果、天然状態にある呼吸鎖超複合体のさまざまな高次集合体の構造を決定することができた。明らかにされたのは4つの主要な超複合体集合体、I1III2IV1、I1III2IV2、I2III2IV2、I2III4IV2で、これらはミトコンドリア内膜でさらに高次の配列を形成している可能性がある。これらの多様な超複合体は主として「タンパク質–脂質–タンパク質」相互作用によって形成され、さらに周囲の膜の局所的形状にかなりの影響を及ぼしている。今回のin situ構造はこれらの呼吸鎖超複合体内の多数の反応中間体も捉えており、複合体Iでのユビキノン/ユビキノール交換機構や複合体IIIでのQサイクルの動的過程に関する手掛かりが得られた。さまざまな条件下で処理したミトコンドリア由来超複合体の構造との比較により、複合体Iと複合体IIIのコンホメーション状態に関連がある可能性が示唆され、これはおそらくは環境変化に応じたものと考えられる。天然の膜環境を維持するこの方法を用いることにより、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の反応中の構造の研究が、原子レベルでの詳細から細胞内のもっと広範な状況まで、さまざまなスケールにわたって高精度で行えるようになった。

