Article
進化学:古代ゲノムで明らかになったチチェン・イッツァの儀式生活の手掛かり
Nature 630, 8018 doi: 10.1038/s41586-024-07509-7
メキシコ・ユカタン半島の古代都市チチェン・イッツァは、古典期後期~末期(紀元600~1000年)にマヤで有数の規模と影響力を有した居住地であり、メソアメリカで最も集中的に研究が行われている考古学遺跡の1つであり続けている。しかし、その儀礼空間の社会的・文化的用途や、その住民と他のメソアメリカ集団との遺伝的なつながりに関しては、多くの疑問が未解決のまま残されている。本論文で我々は、チチェン・イッツァの儀礼的中心地にあったセノーテ・サグラド(陥没穴)近くの地下の集団埋葬地で発見された、紀元約500~900年の未成年個体64体から得られたゲノム規模のデータを提示する。遺伝子解析の結果、解析対象となった全ての個体は男性で、2組の一卵性双生児など、複数組の近親者が含まれることが明らかになった。双生児は、マヤおよびさらに広域のメソアメリカの神話において、神々や英雄たちの二元論的な本質を具現化するものとして極めて重要な意味を持つが、これまで古代マヤの埋葬地で発見されたことはなかった。当該地域の現代人と遺伝学的比較を行ったところ、古代のチチェン・イッツァ居住者との間に遺伝的な連続性が認められたが、ヒト白血球抗原複合体など、ヒトの免疫に関連する特定の遺伝子座位はその例外であり、これは、植民地時代にこの地に持ち込まれた感染症に起因する適応の痕跡であると示唆される。

