ゲノミクス:類人猿の性染色体の完全塩基配列と比較解析
Nature 630, 8016 doi: 10.1038/s41586-024-07473-2
類人猿は、雄特異的なY染色体と、雄と雌の両方に見られるX染色体という2つの種類の性染色体を持つ。Y染色体は雄の生殖に非常に重要で、Y染色体を欠くと不妊につながる。X染色体は生殖と認知機能に不可欠である。類人猿間での交配パターンや脳機能の違いは、性染色体においてもそれに対応する違いがあることを示唆している。しかし、性染色体は反復性が高く、参照アセンブリが不完全であるため、類人猿の性染色体の研究は困難だった。本研究で我々は、テロメアからテロメアまで(T2T)のヒトゲノム用に開発された方法を用い、5種の大型類人猿(ボノボ〔Pan paniscus〕、チンパンジー〔Pan troglodytes〕、ニシローランドゴリラ〔Gorilla gorilla gorilla〕、ボルネオオランウータン〔Pongo pygmaeus〕およびスマトラオランウータン〔Pongo abelii〕)と1種の小型類人猿(フクロテナガザル〔Symphalangus syndactylus〕)のX染色体とY染色体のギャップのないアセンブリを生成し、類人猿性染色体進化の複雑さを解き明かした。類人猿のY染色体は、X染色体と比べてサイズのばらつきが大きく、アラインメント可能性(alignability)が低く、構造的再編成のレベルが高い。これは、系統特異的アンプリコン領域、パリンドローム配列、転位性遺伝因子、サテライト配列の蓄積によるものである。多くのY染色体遺伝子は多コピーファミリー内で増加し、一部は純化選択下で進化していた。従って、Y染色体では動的な進化が見られるのに対して、X染色体はより安定している。ショートリード塩基配列データをこれらのアセンブリにマッピングすることで、100個体以上の大型類人猿の性染色体の多様性と選択のパターンが明らかになった。これらの参照アセンブリは、ヒトの進化や、いずれも絶滅危惧種である非ヒト類人猿の保全遺伝学に有益な情報をもたらすと期待される。

