遺伝子調節:Igk対IghのV(D)J結合機構の違いについての分子基盤
Nature 630, 8015 doi: 10.1038/s41586-024-07477-y
B細胞の発生中に、V(D)J組換えはIghとIgkの座位でクラスターを形成している数百の遺伝子断片から、IgHとIgκの可変領域をコードするエキソンを組み立てる。V、DおよびJ遺伝子断片は、RAGエンドヌクレアーゼを標的とする保存された組換えシグナル配列(RSS)に隣接している。RAGは、JH-RSSに基づいた組換え中心(RC)内でJH-RSSを捉えると、Igh V(D)J組換えを統御する。JH-RSSの方向はRAGをプログラム化して、コヒーシンを介したループ押し出しによって直線状に提示されたDやVHを含む上流のクロマチンをスキャニングさせる。Ighのスキャニング中に、RAGはJH-RSSと収斂(欠失)方向にあるD-RSSやVH-RSSのみをロバストに利用する。しかし、Vκ-to-Jκの結合には、RAGは、欠失方向および逆位方向のクラスターのVκ-RSSを利用するため、直線的なスキャニングとは矛盾する。今回我々は、Vκ-to-Jκ結合機構の特性を明らかにする。Igkではロバストな一次および二次再編成が起こるため、スキャニングアッセイに交絡が生じる。そこで我々は、Vκ-to-Jκの一次再編成のみが起こる細胞を作製し、一次Jκ-RCからのRAGスキャニングは、CTCF部位をベースとするSisエレメント内のちょうど8 kb上流で終了することを見いだした。SisとJκ-RCはVκ座位とはほとんど相互作用しないが、Sisの上流4 kbのCTCF部位をベースとするCerエレメントは、その座位にあるさまざまなループ押し出し障害と相互作用する。VH座位の逆位と同様に、DJHの逆位はVH-to-DJHの結合を阻害したが、Vκ座位やJκの逆位は、ロバストなVκ-to-Jκの結合を可能にした。以上のように、これらの実験は、ループ押し出しが、RCをベースとするRAGによる短距離拡散を介した捕捉のために、Vκ断片をCerの近傍へ移動させていることを意味している。我々は、Igk対Ighでの拡散によるV(D)J組換えに重要な機構的エレメントを特定するために、標的化した染色体転座により作製したハイブリッドIgh–Igk座位でVκ-to-JHおよびD-to-Jκの再編成を調べ、非常に強力なVκ RSSとJκ RSSを特定した。実際に、ハイブリッドや正常のIgkおよびIgh座位でRSSを置き換えると、Igk-RSSはIgh-RSSと比較してロバストな拡散による結合を促進する能力を持つことが確認された。我々は、Igkは拡散によるVκ-to-Jκ結合を担う強力なRSSを進化させた一方で、IghはRAGスキャニング障害によりVH結合を調節するのに必要な弱いRSSを進化させたと考えている。

