発生生物学:通常とは別の細胞周期が多繊毛細胞の分化を協調させる
Nature 630, 8015 doi: 10.1038/s41586-024-07476-z
細胞のカノニカルな有糸分裂サイクルは、DNA複製、中心小体の複製、細胞質分裂を協調させて、1個の細胞から2個の細胞を作り出す。しかし、哺乳類の栄養膜巨細胞など、一部の細胞はエンドサイクルのような通常とは異なる細胞周期を使って有糸分裂を迂回する。哺乳類の気道や脳室、生殖器系で見られる分化中の多繊毛細胞は、有糸分裂後だが数百個もの中心小体を作り、そのそれぞれが成熟して基底小体になって運動性繊毛形成の核となる。多繊毛細胞の分化の特定の段階には、複数の細胞周期調節因子が関わっているとこれまで考えられてきた。今回我々は、分化中の多繊毛細胞は、細胞周期調節因子を統合して通常とは別の新規な細胞周期をたどることを明らかにし、これを多繊毛化サイクルと名付けた。この多繊毛化サイクルでは、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)とそれに対応するサイクリンなど、多くのカノニカルな細胞周期調節因子が配置転換されて使われている。例えば、サイクリンD1とCDK4、CDK6は有糸分裂のG1期からS期への進行を調節する因子だが、多繊毛化サイクルでは多繊毛細胞の分化開始に必要とされている。多繊毛化サイクルではカノニカルな細胞周期の一部分、例えば中心小体合成が増幅され、他の部分、例えばDNA複製などが遮断されている。また、このサイクルでは、カノニカルなサイクルでのS期からG2期への進行の転写調節因子であるE2F7が高レベルで発現されている。多繊毛化サイクルでは、E2F7はDNA複製装置をコードする遺伝子の発現を直接的に抑制して、S期に似た遺伝子発現プログラムを終了させる。E2F7が失われると、多繊毛細胞でのDNA合成に異常が生じ、多繊毛化サイクルの進行の調節がうまくいかず、中心小体の成熟と繊毛形成が起こらなくなる。これらの知見から、多繊毛細胞は通常とは別の細胞周期を用いて、増殖の制御ではなく、分化の協調を図っていると結論される。

