Article
惑星科学:小惑星ディンキネシュの接触二重衛星
Nature 629, 8014 doi: 10.1038/s41586-024-07378-0
直径およそ5 km未満の小惑星は、進化の過程で輻射トルク(すなわち、YORP〔ヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック〕効果)が顕著な要素となるほどサイズが小さいため、その歴史は複雑である。小惑星ディンキネシュ(小惑星番号152830)は、主小惑星帯の内縁付近で太陽の周りを軌道運動している、軌道長半径が2.19 AUの小さな小惑星であり、そのS型スペクトルは主小惑星帯のこの部分にある天体に典型的なものである。本論文で我々は、小惑星探査機ルーシーがディンキネシュから431 km以内の所を通過したときの観測結果について報告する。探査機ルーシーにより、ディンキネシュがわずか720 mの有効直径を有し、予想外に複雑であることが明らかになった。特に注目すべきは、経度方向の目立った溝と、これを覆う赤道付近の突出した隆起の存在、そして初めて確認された接触二重衛星の発見であり、この衛星は「セラム((152830) Dinkinesh I Selam)」と名付けられた。セラムは、直径が210 mおよび230 mという、ほぼ同じサイズの2つのローブで構成されている。セラムは、ディンキネシュから3.1 kmの距離をおよそ52.7時間の軌道周期で周回しており、潮汐的に固定されている。この系の力学的な状態、角運動量、地形学的な観測結果から、ディンキネシュの隆起と溝は、YORP効果による自転速度の増大から生じた構造崩壊と質量放出、そしてその後の放出された物質の部分的な再降着の結果であろうと推測される。セラムはおそらく、この事象によって放出された物質の降着を受けたと考えられる。

