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生物工学:オミクロン株に対する臨床抗体の効力を計算的に回復させる

Nature 629, 8013 doi: 10.1038/s41586-024-07385-1

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって、モノクローナル抗体による予防薬あるいは治療薬の有望性が示され、ウイルス逃避によって、有効な選択肢がいかに早く狭まることがあるのかが明らかになった。2021年に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)オミクロン株が出現した際に、エバシェルドやその成分であるシルガビマブなど多くの抗体製剤が効力を失った。シルガビマブは、その元となったCOV2-2130と同様に、他の抗体と併用可能なクラス3抗体で、既存の手法と置き換えることが難しい。そのような価値の高い抗体を迅速に改変して、新興変異株に対する有効性を回復させることは、非常に魅力的な緩和戦略である。我々は、主要なデルタ株に対するCOV2-2130の有効性を維持しつつ、オミクロンBA.1株やBA.1.1株に対する有効性を再設計して更新することを試みた。本論文で我々は、計算的に再設計した抗体2130-1-0114-112がこの目的を実現し、同時にデルタ株や以降の懸念される変異株に対する中和能を増強して、調べた変異株(WA1/2020、BA.1.1およびBA.5)をin vivoで防御することを示す。数万のシュードウイルス株のDMS(deep mutational scanning)により、2130-1-0114-112は逃避傾向を増加させずに、広域な効力を高めることが明らかになった。我々の結果は、計算手法は多数の逃避変異株を標的とするよう抗体を最適化し、同時に効力を高められることを示唆している。我々の計算手法では、実験の繰り返しや既存の結合性データが必要でないため、逃避変異株への対処と逃避脆弱性の軽減のための迅速な対応戦略が可能になる。

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