Article
神経科学:睡眠中の海馬神経表現の再チューニング
Nature 629, 8012 doi: 10.1038/s41586-024-07397-x
空間記憶の基盤となる海馬の神経表現は、形成後にも継続的に精密化が進む。今回我々は、自由行動中のラットからのアンサンブル記録にベイズ学習手法を適用してデコーディングした空間位置の、各ニューロンの発火タイミングでの平均に基づく新しい手法を用い、オフライン状態下のニューロン群の空間チューニングを刻々追跡した。これらのチューニングを計測した結果、海馬鋭波リップル中の空間表現が、睡眠中数時間にわたって安定で、もともとは迷路探索中に観測された場所受容野に強く整列されていることが分かった。これらの表現は、迷路探索の前に構築された構造を含む因子と、迷路探索時のθ振動および覚醒時鋭波リップル中に生じる表現との合成として説明でき、これによって、アンサンブル生成へのこれらの事象の寄与が明らかになった。驚いたことに、睡眠時鋭波リップル中の神経表現から、迷路を再探索した時に生じる場所受容野が予測可能であった。この予測は、再探索時の場所受容野が前回の探索時の場所受容野からずれていても可能であった。一方、迷路探索前の睡眠中および安静時や睡眠の後期段階では、迷路の場所受容野に弱くしか整列していないチューニングが観測された。総合すると、新しいデコーディング手法によって、オフライン期間中の場所受容野の安定化と再チューニングを推測・特徴付けすることが可能になり、新規探索体験後の迅速な表現の生起と、海馬の神経表現動態での睡眠の役割が明らかになった。

