腫瘍免疫学:PGE2はIL-2シグナル伝達とミトコンドリア機能を阻害することでTILの増殖を抑制する
Nature 629, 8011 doi: 10.1038/s41586-024-07352-w
抗原に遭遇したCD8+ T細胞の増殖は、がん患者での腫瘍浸潤リンパ球(TIL)-養子細胞療法(ACT)の成功に重要である。インターロイキン2(IL-2)は、CD8+細胞傷害性Tリンパ球機能の重要な調節因子として働き、その増殖と細胞傷害能を促進する。従って、IL-2応答性とT細胞の抗腫瘍応答を再活性化する戦略を実行するには、腫瘍微小環境におけるIL-2感知の障壁となる機構を理解することが不可欠である。今回我々は、腫瘍微小環境における免疫応答の負の調節因子であることが知られているプロスタグランジンE2(PGE2)が、患者の腫瘍組織に高濃度で存在していて、ヒトCD8+ TILにおいて、PGE2受容体であるEP2やEP4を介してIL-2感知の障害を引き起こすことを報告する。機構的には、PGE2はTILにおいてIL-2Rγc鎖の発現を低下させることで、細胞膜でのIL-2Rβ–IL2Rγc二量体の組み立てを妨げ、IL-2感知を抑制する。これにより、IL-2–mTOR適応の障害とPGC1αによる転写が抑制され、腫瘍応答性TILにおいて酸化ストレスとフェロトーシス細胞死が引き起こされる。ACTのためにTILを増殖させる際に、PGE2からEP2やEP4へのシグナル伝達を阻害するとIL-2感知が高まり、腫瘍応答性TILの増殖が増強され、また、こうしたTILをin vivoに移入すると腫瘍制御が強化された。我々の研究は、腫瘍微小環境においてPGE2が仲介するヒトTIL障害の根底にある基本的な特徴を明らかにしている。これらの知見は、がん免疫療法や細胞療法による治療に関係があり、TILでのIL-2感知を増強してIL-2応答を増幅することで、治療能を高めたエフェクターT細胞の増殖を促進するという標的戦略の開発を可能にする。

