遺伝学:単一細胞解析によって明らかになった状況依存的な細胞レベルのmtDNAの選択
Nature 629, 8011 doi: 10.1038/s41586-024-07332-0
ヘテロプラスミーは、野生型と変異型のミトコンドリアDNA(mtDNA)分子が単一の細胞内に共存する状態である。ヘテロプラスミーのレベルは、発生や疾患、加齢において動的に変化するが、このような変化が選択によるのか浮動によるのか、また、細胞レベルで起こるのか細胞内で起こるのかも分かっていない。今回我々は、単一の細胞のヘテロプラスミーを超ハイスループットで追跡するSCI-LITE(single-cell combinatorial indexing leveraged to interrogate targeted expression)という新しい手法と、高精度のmtDNA塩基編集技術(DdCBE)を組み合わせることにより、分裂中の細胞でヘテロプラスミーの動態を詳しく調べた。我々は細胞を改変して、複合体IのmtDNAの同義変異あるいは非同義変異を持たせたところ、標準的な培養条件では、細胞集団から非同義mtDNAバリアントは一掃されるが、同義バリアントは維持されることが分かった。これは、集団のヘテロプラスミーを形作る上で、選択が単なる浮動よりも優位であることを示唆している。単一細胞のmtDNAヘテロプラスミーと祖先を同時に追跡したところ、集団のヘテロプラスミーは変化していくものの、個々の細胞系譜のヘテロプラスミーは安定したままであることが分かり、分裂中の細胞では、細胞の適応度レベルで選択が働くことが示された。我々は、これらの知見に基づき、細胞を、複合体Iの生化学的活性を失った方が細胞の適応度に有利であると報告されている環境に置くことによって、それらに切断型複合体IのmtDNAヘテロプラスミーを高レベルで蓄積させることができることを示す。分裂中の細胞では、非同義mtDNAヘテロプラスミーは、細胞の適応度に対して有害、中立、ときには有利にも働き得るが、このような効果の「符号」は環境に完全に依存すると、我々は結論する。

