Article

プロテオミクス:ケモプロテオームを利用した、WRNヘリカーゼの共有結合性アロステリック阻害因子の発見

Nature 629, 8011 doi: 10.1038/s41586-024-07318-y

WRNヘリカーゼは、マイクロサテライト不安定性(MSI)を示すがんの有望な治療標的の1つであり、これはWRNヘリカーゼが、ミスマッチ修復機構に欠陥のある細胞に蓄積する有害な非カノニカルDNA構造の解消に必須の役割を担っているからである。現在のところ、ヒトのDNAヘリカーゼやRNAヘリカーゼを直接標的とする認可薬剤は存在しないが、その原因の1つは、この種のタンパク質に作用する強力で選択性のある化合物の開発が難しいことである。今回我々は、臨床段階にある、WRNの共有結合性アロステリック阻害因子VVD-133214の、ケモプロテオミクスを利用した発見について報告する。この化合物は、ヘリカーゼがDNAをほどく際にドメイン間移動する領域に位置しているシステイン(C727)に選択的に結合する。VVD-133214はヌクレオチドと協調してWRNタンパク質に結合し、適切なヘリカーゼ機能に必要な動的柔軟性のないコンパクトなコンホメーションを安定化する。その結果、高MSI(MSI-H)細胞では、広範な二本鎖DNA切断、核の膨潤、細胞死が引き起こされるが、マイクロサテライト安定細胞では、これらは起こらない。この化合物は、マウスでの忍容性は良好で、複数のMSI-H大腸がん細胞株と患者由来の異種移植モデルでロバストな腫瘍縮小を引き起こした。我々の研究は、がん細胞の内在性ATP補因子との競合を回避しながらWRN機能を阻害できるアロステリックな手法を示しており、MSI-Hがんの患者にとって、VVD-133214が有望な薬剤候補であることを明示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度