Article

神経科学:BMP–SMAD1シグナル伝達によるニューロンの興奮と抑制のバランス制御

Nature 629, 8011 doi: 10.1038/s41586-024-07317-z

哺乳類の大脳新皮質におけるニューロンのネットワークは、生涯を通じて、ニューロンの計算に不可欠な興奮と抑制のバランスを維持している。バランスの取れた状態からの逸脱は神経発達障害と結び付けられており、著しい破綻はてんかんの原因となる。このバランスを維持するため、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンからなるニューロンの微小回路は、神経活動の変化を感知して、ニューロンの接続と機能を調整する。本研究で我々は、成体マウスの新皮質で、ニューロンネットワークの活動上昇に応答して活性化されるシグナル伝達経路を特定した。興奮性ニューロンの過剰な活動は、胚発生でのモルフォゲンとしての役割がよく知られた成長因子であるBMP2のレベルの上昇を介して、ニューロンネットワークへと伝達される。BMP2は、転写因子SMAD1を介して、パルブアルブミン発現(PV)介在ニューロンに作用し、SMAD1は一連のグルタミン酸作動性シナプスタンパク質とペリニューロナルネットの構成要素を制御する。PV介在ニューロン特異的にBMP2–SMAD1シグナル伝達を破壊すると、PV細胞でグルタミン酸作動性の神経支配が失われ、ペリニューロナルネットの発達不全や興奮性の低下が起こる。最終的に、このPV介在ニューロンの機能的動員の障害は、皮質の興奮と抑制のバランスを崩壊させ、マウスは自発的なてんかん発作を起こす。我々の知見は、発生に関わるモルフォゲンシグナル伝達が、哺乳類の成体脳において、皮質ネットワークの安定化に転用されていることを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度