Article

環境科学:ゴーストロードとアジア太平洋の熱帯林破壊

Nature 629, 8011 doi: 10.1038/s41586-024-07303-5

道路は人類史において最速のペースで拡張している。これは特に生物多様性の豊かな熱帯の国々で顕著で、そうした国々では道路が森林の喪失や分断化、山火事、違法な土地侵入、社会への悪影響につながる場合がある。違法または非公式に建設され、既存のどの道路地図にも載っていない道路は多く、そうした「ゴーストロード」が生態系に与える損害はあまり明らかにされていない。今回我々は、訓練を受けたボランティアによる約7000時間に及ぶ作業によって、アジア太平洋の熱帯地域全体にわたり、それぞれ面積が1 km2の142万区画をサンプリングし、ゴーストロードの地図を作製した。この徹底したサンプリングにより、今回の調査区画において計137万kmに及ぶ道路が見いだされた。これは、世界規模の主要な道路データセットに見られるものの3.0~6.6倍に相当する。調査対象となった地域全体にわたり、道路の建設はほぼ全ての場合で局地的な森林喪失に先行しており、道路の密度は、森林破壊と関連している可能性のある38の生物物理学的・社会経済的共変量の中で圧倒的に強い相関を示した。道路密度と森林喪失の関係は非線形的で、森林破壊は、道路が景観を貫いた直後にピークに達し、その後道路が増えて残されたアクセス可能な森林がほとんど消失すると減少した。注目すべきことに、保護地域内の低い道路密度で調整した後では、森林喪失の抑止に対する保護地域の追加的な効果はごく限定的だったことが明らかになり、これは、保護地域の極めて重要な保全機能が道路および道路関連の環境破壊の制限であることを示唆している。総合すると我々の知見は、熱帯林に対する全ての直接的な脅威の中で、急増していながら研究の進んでいないゴーストロードが最も深刻なものの1つであることを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度