材料科学:有機分子における高周波振動と励起子のデカップリング
Nature 629, 8011 doi: 10.1038/s41586-024-07246-x
π共役分子における励起子の、高周波振動モード、特に炭素–炭素伸縮モード(1000~1600 cm−1)とのカップリングは避けられないと考えられてきた。こうした高周波モードは、非放射損失を加速させ、発光ダイオード、蛍光バイオマーカー、光起電デバイスの性能を制限する。今回我々は、広帯域衝撃振動分光法、第一原理モデリング、合成化学を組み合わせることによって、さまざまなπ共役分子における励起子–振動カップリングを調べた。その結果、励起子を高周波振動とデカップルする2つの設計ルールが明らかになった。第一に、励起子波動関数が、電子密度と正孔密度が空間的に分離した実質的な電荷移動特性を持つ場合、高周波モードがドナー部かアクセプター部のいずれかに局在化し得るため、励起子エネルギーやその空間分布を著しくは乱さないことが見いだされた。第二に、関与する分子軌道が対称性によって課される非結合性を有し、そのためにπ結合秩序を調節する高周波振動モードとデカップリングするような材料を選択できることが分かった。我々は、これらの設計ルールの両方を、電荷移動励起子からの非常に効率の高い近赤外発光(680~800 nm)を示す一連のスピンラジカル系を作り出すことによって例証する。我々は、こうした系が、高速非放射脱励起には低過ぎる250 cm−1未満の周波数でのみ、振動モードと実質的にカップリングすることを示す。これによって、同程度のバンドギャップを持つπ共役分子と比較して、非放射脱励起速度を2桁近く抑制できるようになる。今回の結果は、高周波モードとのカップリングに起因する損失が、必ずしもこうした系の基本特性ではないことを示している。

