生化学:小胞のモノアミン貯蔵と薬剤相互作用についての構造面からの考察
Nature 629, 8010 doi: 10.1038/s41586-024-07290-7
神経機能、内分泌機能と免疫機能の協調に不可欠な伝達物質である生体モノアミンは、小胞モノアミン輸送体(VMAT)によって分泌小胞に貯蔵され、制御されて量子的に一定量ずつ放出される。プロトンの対向輸送を利用して、VMATはモノアミンを約1万倍に濃縮し、神経毒性物質を隔離してニューロンを保護する。VMATはさまざまな治療薬や造影剤の標的として、神経変性疾患、高血圧や薬物依存の治療や監視に使われている。しかし、このような作用の構造的機構はまだ解明されていない。今回我々は、ヒトVMAT1について全部で8つの状態、すなわち何も結合していない状態に加えて、4種類のモノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン)、パーキンソニズムを引き起こすMPP+、覚醒剤であるアンフェタミン、降圧剤のレセルピンとそれぞれ複合体を形成した状態のクライオ電子顕微鏡構造を決定した。その結果、レセルピンの結合によって細胞質側に開いたコンホメーションが捉えられたが、それ以外の構造では広範なゲート開閉相互作用によって安定化されている内腔側に開いたコンホメーションが見られた。内腔側に開いたこの状態への移行が起こりやすいことは、モノアミン集積の一因となっている。一方、プロトン付加は細胞質側に開いた状態への移行を促進し、同時にモノアミンの結合を防いで、意図されたものでないモノアミン欠乏を回避している。モノアミンと神経毒性物質は1つの結合ポケットを共有しており、このポケットには特異性をもたらす複数の極性部位があり、ポケットは手首から拳にかけての形と似ていて、これが多用途性をもたらす。このポケットに見られる差異によって、SLC18ファミリー全体にわたる基質選択性が説明される。これらの構造的知見とその裏付けとなる機能研究を総合することにより、小胞によるモノアミン輸送の機構が明らかになり、神経変性疾患や物質乱用の治療法を開発する基盤が得られる。

