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構造生物学:昆虫の味覚受容体による糖の感知の分子基盤

Nature 629, 8010 doi: 10.1038/s41586-024-07255-w

動物は糖を好んで食べるが、それは糖のエネルギー潜在量と甘味を感じることの快感のためである。しかし、代謝的に見れば全ての糖が等価ではないため、化学的にはよく似た甘味物質を感知し、区別するための仕組みが必要となる。昆虫は糖類を識別するためにイオンチャネル型の味覚受容体ファミリーを使っており、個々の受容体は特異的な甘味分子によって選択的に活性化される。今回我々は、糖の選択性の分子基盤について手掛かりを得るために、カイコガ(Bombyx mori)の味覚受容体Gr9(BmGr9)の構造を、この受容体の唯一の活性化リガンドであるD-フルクトースが存在する状態と存在しない状態で決定した。これらの構造と、構造に基づく突然変異誘発および機能アッセイを組み合わせて行うことで、D-フルクトースの全体的形状と化学基のパターンに正確に適合するリガンド結合ポケットにD-フルクトースがぴったりとはまり込む様子が明らかになった。一方、コンピューターによるドッキングシミュレーションと実験による結合アッセイでは、他の糖類もBmGr9に結合することが分かったが、それらの糖では受容体は活性化されなかった。我々は次いで、そのような活性化できない糖の1つであるL-ソルボースと複合体を形成したBmGr9の構造を決定した。どちらの糖もBmGr9の同じような位置に結合するが、保存されている2個の芳香族残基を架橋することができるのはD-フルクトースだけであり、この架橋が結合ポケットとイオン透過孔のヘリックスとを結び付け、コンホメーション変化を引き起こしてイオン透過孔が開くようになる。このように、化学的特異性はリガンド結合ポケットの選択性だけに依存しているのではなく、受容体とリガンドの相互作用とアロステリックな共役の組み合わせから生じる創発的な特性である。これらの結果は、受容体の大まかな調整は結合ポケットのサイズと化学特性によってなされるが、受容体活性化の微調整はイオン伝導を調節するアロステリック経路の選択的関与によってなされるというモデルを裏付けるものだ。

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