医学研究:大腸がんニッチで優勢なFusobacterium nucleatumの独特なクレード
Nature 628, 8007 doi: 10.1038/s41586-024-07182-w
Fusobacterium nucleatum(Fn)は、ヒトの口腔に存在する細菌で、健康な人の下部消化管ではほとんど見られないが、ヒト大腸がん(CRC)腫瘍には豊富に存在している。腫瘍内のFn量が多いことは、再発、転移、患者の予後不良と関連している。今回我々は、Fnの腫瘍への定着を促進する遺伝的要因を明らかにするために、がんでないヒトの口腔から採取した80株と、CRC患者51人の腫瘍から培養した固有のがん関連の55株を合わせた135株のFnについて、ゲノムを完全に解読した。パンゲノム解析から、CRCに濃縮される483の遺伝的要因が特定された。腫瘍から分離された株は、主にFn亜種のanimalis(Fna)に属していた。また、Fnaは単一の亜種と考えられていたが、ゲノム解析から、異なる2つのクレード(Fna C1およびFna C2)で構成されていることが明らかになった。これらのうち、Fna C2のみがCRC腫瘍ニッチで優勢であった。Fna間の解析から、代謝能や消化管への定着の増強と一致する195のFna C2に関連する遺伝的要因が特定された。これを裏付けるように、Fna C2を投与したマウスでは腸腺腫の数が増加し、代謝物が変化した。CRC患者116人のヒト腫瘍組織のマイクロバイオーム解析により、Fna C2が濃縮していることが実証された。腫瘍組織と隣接する正常組織の62対の標本を比較すると、Fna C2のみが腫瘍で正常組織より濃縮されるのはFna C2だけであることが示された。これはさらに、CRC患者627人と健康な619人の糞便試料のメタゲノム解析によって裏付けられた。まとめると我々の結果は、Fnaのクレードは2つに分岐しており、報告されているヒトCRCでのFn濃縮を促すのはFna C2であることを示すとともに、CRCニッチに及ぼす病原性Fna C2のCRCニッチ適応の遺伝的基盤を明らかにしている。

