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生殖生物学:ハクジラ類における閉経の進化
Nature 627, 8004 doi: 10.1038/s41586-024-07159-9
閉経が進化した経緯や理由を明らかにすることは、さまざまな分野で長年にわたる課題となっている。雌は一般に、成体期の全体にわたり生殖を行うことで、繁殖成功を最大化させることができる。しかしヒトでは、女性は自然寿命を終える数十年前に生殖が停止する。ヒトでの閉経の適応値については理解が進んできたが、そうした知見の一般性はいまだ明らかにされていない。ハクジラ類は、閉経が複数回にわたって進化した唯一の哺乳類タクソンであり、閉経がなぜどのように進化するかに関する理論を相対的な文脈で検証するためのまたとない機会を提供する。今回我々は、比較用のデータベースを構築して解析することにより、競合する進化仮説の検証を行った。その結果、ハクジラ類における閉経は、「長生き(live-long)」仮説で予想されるように、雌が生殖寿命を延長させずに個体寿命を延長させたことで、進化したと分かった。さらに、閉経は、雌が自身と娘の生殖の重なりを増やさずに自身と孫や子の寿命の重なりを増やすことで、世代間支援の機会を増やすという結果をもたらすことも示された。今回の結果は、ヒトの生活史の進化に関して情報をもたらす類似例を提供するとともに、ヒトの閉経を導いたのと同じ経路が、ハクジラ類の閉経の進化を説明できることを実証している。

