腫瘍免疫学:SOX17により、初期の大腸腺腫や大腸がんの免疫回避が可能になる
Nature 627, 8004 doi: 10.1038/s41586-024-07135-3
がんの特徴の1つは、免疫による破壊の回避である。この過程は主に局所進行がんや転移がんで調べられてきたが、前悪性腫瘍あるいは初期浸潤腫瘍が免疫による検出を回避する仕組みについてはほとんど分かっていない。今回我々は、この過程を初期の大腸がん(CRC)において理解するために、ナイーブ大腸がんオルガノイドをin vitroで改変してApcヌル変異、KrasG12D変異、Trp53ヌル(AKP)変異を持たせ、in vivoのナイーブ大腸環境にどのように適応するか調べた。包括的なトランスクリプトーム解析とクロマチン解析により、in vivoでは内胚葉特異的転写因子であるSOX17の発現が強く上昇するようになることが明らかになった。注目すべきことに、SOX17の喪失は、in vitroではAKPオルガノイドの増殖に影響を及ぼさなかったが、in vivoではAKP腫瘍の生存能力を著しく低下させた。増殖したごく一部のSOX17ヌル腫瘍では、対応する野生型腫瘍の免疫抑制性微小環境とは対照的に、インターフェロンγ(IFNγ)産生エフェクター様CD8+ T細胞の顕著な浸潤が見られた。機構的には、SOX17は、内因性Apcヌル前悪性腺腫と移植されたオルガノイド由来AKP CRCの両方において、腫瘍細胞がIFNγを感知してこれに応答する能力を抑制することで、抗腫瘍T細胞応答を妨げる。その上、SOX17は胎仔の腸プログラムを働かせて、LGR5+腫瘍細胞からの分化を引き起こし、主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC-I)の発現が低く免疫を回避するLGR5−腫瘍細胞を作り出す。我々は、SOX17は、大腸がんの初期段階に関与して、CRCのイニシエーションとプログレッションを可能にする免疫回避プログラムの調整を行う転写因子であると提案する。

