Article

生態学:森林群集の安定化密度依存性の緯度パターン

Nature 627, 8004 doi: 10.1038/s41586-024-07118-4

同種の個体に取り囲まれた植物個体の生存や成長が悪くなることは数々の研究で明らかにされており、この現象は「同種の負の密度依存性(CNDD)」として知られている。以前からある生態学的仮説では、CNDDは温帯林よりも熱帯林の方が顕著であって、群集の安定性、種の共存、局所的な樹種多様性を強化するとされている。CNDDのそうした緯度勾配を支持する過去の解析は、静的なデータを使っているため方法論的制約を受けていた。本論文で我々は、動的な死亡データを用いて23地点にわたり樹種別・立地別のCNDDを評価した、CNDD緯度パターンの網羅的アセスメントの結果を提示する。全種の平均を取ると、安定化CNDD(stabilizing CNDD)は1地点を除く全ての立地で認められたが、安定化CNDDの平均強度が熱帯に向かって高まるわけではないことが明らかになった。ただし、熱帯の樹木群集においては、個体数が少ない種および中程度の種の安定化CNDDは個体数が多い種よりも強かった。このパターンは温帯林には認められず、CNDDは温帯林よりも熱帯林で種の個体数を強く規定することが示唆された。また、種の多様性に対する安定化作用を弱めると考えられるCNDDの種間変動は大きいが、そこに緯度による有意差は見られないことも明らかになった。こうしたパターンが多様性の緯度勾配に与える影響を評価することは困難であるが、各種の集団サイズ(個体数)をより効果的に調節すれば熱帯樹木群集の安定性が高まることになり、ひいては熱帯林の局所的多様性の高さに寄与するのではないかと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度