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生物物理学:自己増強移動性によって可能になった生命体における渦パターン形成

Nature 627, 8004 doi: 10.1038/s41586-024-07114-8

細胞内小器官の生合成から胚発生まで、自己組織化構造の形成は、生物系の顕著な特徴である。生物における規則的な空間パターンの出現は、細胞の挙動や分化を調整する複雑な化学的シグナル伝達によって駆動されることが多い一方、純粋に物理的な相互作用は、精子や細菌の懸濁液における結晶性渦配列などの規則的な生物学的パターンの形成を駆動し得る。今回我々は、マルチスケールの秩序化を伴う大規模な規則的空間構造を作り出す、物理的相互作用によって駆動される新しい自己組織化パターン形成経路を発見した。具体的には、我々は、高密度細菌生命体がメソスケールの高速回転渦の格子を自発的に作ることを見いだした。こうした渦は、それぞれ約104~105個の運動性細菌細胞で構成され、センチメートルを超えるスケールで明確な六角形秩序を伴い、空間的に配置されていた。その一方で、渦の個々の細胞は、強い極性渦秩序を伴って協調した方向に移動した。単一細胞追跡と数値シミュレーションから、この現象が系における自己増強移動性(self-enhanced mobility)、すなわち、特定の細胞密度において細胞による集団的応力とともに個々の細胞の速度の上昇によって可能になることが示唆された。応力によって生じる移動性向上と流動化は、さまざまな長さスケールの高密度生命体においてよく見られる。今回の知見は、自己増強移動性が、生物系や、より一般的には流体様挙動と固体様挙動の境界に近い他のアクティブマター系に、単純な物理的パターン形成機構をもたらすことを実証している。

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