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がんゲノミクス:肺腺がんでの上皮細胞の状態と可塑性のアトラス
Nature 627, 8004 doi: 10.1038/s41586-024-07113-9
初期肺腺がんの発生を引き起こす細胞過程を理解することは、介入戦略を考案するために必要である。今回我々は、初期段階の肺腺がん16例、そしてそれらにマッチする47の正常肺試料から得た24万6102個の単一上皮細胞について解析を行った。上皮細胞は多様な状態の正常細胞とがん細胞からなり、がん細胞に見られる多様性は、肺腺がん特異的な発がんドライバーと強く関連していた。KRASが変異しているがん細胞では、独特な転写特性、分化の低下と低レベルの異数性が見られた。ヒト肺腺がん試料を囲んでいる非悪性領域には中間細胞型の肺胞細胞が多く含まれていて、これらではKRT8の発現上昇(KAC〔KRT8+ alveolar intermediate cell〕と命名)、分化の低下、可塑性上昇とドライバーKRAS変異が見られた。KACの発現プロファイルは、肺前がん細胞と肺腺がん細胞で多く見られ、生存率の低さを示していた。タバコの発がん物質に曝露されたマウスでは、KACは肺腫瘍に先立って出現し、発がん物質への曝露を中止した後も数カ月存在し続けた。さらに、KACはKras変異を獲得し、2型肺胞(AT2)細胞から作出されたKACを多く含むオルガノイドではKRASを標的とした阻害に対して感受性を示した。また、発がん物質曝露後のAT2細胞とKRT8+細胞に対する細胞系譜標識によって、KACはAT2から腫瘍細胞への形質転換での中間体である可能性が明らかになった。この研究は、肺腺がん発生の根底にある上皮細胞状態についての新たな知見を示すもので、そのような状態には、予防や介入の標的候補が含まれている可能性がある。

